2009年9月27日日曜日

中世を旅する人びと―ヨーロッパ庶民生活点描

中世を旅する人びと―ヨーロッパ庶民生活点描 (ちくま学芸文庫)
阿部 謹也
筑摩書房
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私は何故か放浪民というモチーフが好きで、その流れからサンカから被差別民への興味ということでこのblogにもいくつか書いてるような本をよんできた。 そこからなら西洋の放浪民としてのロマ、ジプシーに関する物も読んでみたいと思ってなにで見つけたのか忘れたが、これが目についたので読んでみた。

内容的には主にドイツ地方の西暦1500年あたりを中心として1000年頃から1800年頃までの庶民の生活とその移り変わりを描いている。 

この時代の国同士の争いや大きな物事などに関しては高校の世界史などでも勉強するし、比較的一般的な知識として誰しもが持っている物だと思うが、その時代に生きた庶民がどのようなことを考え、どのような生活を行っていたのかというのは自分は全く知らなかった。

この描かれているような時代において、旅とはどのような物であったのか、旅人と定住者の間にあった居酒屋、旅籠はどのような役割を担っていたのか、定住者はどのような生活を行い、放浪者はどのような約束のもとに放浪を行っていたのかというようなことがとても鮮やかに描かれている。

ノベやファンタジーの物語を作るのであればこの本から中世の生活という物を多く学べると思う。
たとえばこの本を読んだ直後に狼と香辛料〈11〉Side Colors2 (電撃文庫)を読んだのだが、その中にこの本の中にある境界線の石を記録するために、子供に位置を覚えさせて、殴ってその記憶をとどめるというエピソードが出てくる。 狼と香辛料では村の基準を覚えさせるためにこのエピソードを使っていたが、本来であれば村の中心は教会であったり、井戸であったりで、明確で何年も移動するはずがない物なので、この方法を使って覚えさせる必要はない。 この方法を使って覚えさせる必要があるのは、村の外の境界線、なにもない原野の真ん中で、ここが村と村の境界線であるというようなことを記憶にとどめるために、この方法が使われていた。

この本にはそういう中世の人たちの生の生活が垣間見えるために、そういう面を通してラノベなどの裏側が見えてくると思う。


期待していたロマに関する部分は少なく、その点が少し残念ではあったが、それ以外には得る物が多く、とても面白い本だった。

同じような内容の本で旅する人びと (ヨーロッパの中世)というのもあるようなのでこれもまた読んでみたいと思う。


旅する人びと (ヨーロッパの中世)
関 哲行
岩波書店
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