2010年10月24日日曜日

天国旅行

天国旅行
天国旅行
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三浦 しをん
新潮社
売り上げランキング: 115324
おすすめ度の平均: 4.5
4 心中をテーマにした短編集
4 悪くはないですが…
5 生と死の狭間を見つめる
5 三浦しをんは今年も快調!


1日800人。 これがなんの数字かというと、日本で自殺する人の数。

年間3万人、これだけの人が毎日自殺している中、この本を読むとこの多くの自殺者の中にはそれぞれの物語があり、自殺に到る原因があり、自殺を選ぶ意味があったのだろうと思うが、それでもその自殺しようという決意はもしかしたらわずかなことで変えることができたのではないだろうかという思いを抱いてしまう。

森の奥

そういう些細なきっかけで自殺しようという人を救えるのではないかという期待を抱いてしまう話。 それぞれの人はそれぞれの理由で必死だろうが、その理由もほかから見れば、自殺するほどのことではないというのは良くあるんだろうと思う。 そこで自分を客観視できるかどうかが運命の分かれ道でもあるんだろうな。 

最後の部分で、彼の行方が分からないが故に物語の印象が深くなる。

遺言

「死んでおけばよかった」その言葉をキーワードに語られる昔語り。 老い先短い高齢の主人公の独り語りだが、そこに語られる「きみ」と呼ばれる伴侶との凄烈な思い出と、その結果としての今と、その中で思い続けた主人公の心情とがとてもしみじみ来る。 願わくば将来自分も伴侶を得てこのような思いを残したいと思う。



10代の女の子は男とは全然違う世界を見てるんだなと言うことを二人の妹を見ていて思った。 自分と、自分の目に見える範囲しか見ていない。 だからこそそれだけ人との関係において濃密なんだろう。 あこがれていた人が自殺し、その原因を暴くが、さらに謎にとらわれていく。

星くずドライブ

幽霊になってしまった恋人が普通に主人公の身の回りにいる。 まさしく幽霊に取り憑かれたというような状況。 まさしく取り憑かれたような状態。 「永遠はあるよ」というのは某ゲームの台詞だが、その永遠のグロテスクさが際立つ。


幽霊ものが多かったりもするが、死というものを通して伝わる人の想いがしみじみ来る短編集。

2010年10月13日水曜日

ある秋の卒業式と、あるいは空を見上げるアネモイと。

ある秋の卒業式と、あるいは空を見上げるアネモイと。 (一迅社文庫)
朱門 優
一迅社
売り上げランキング: 127264
おすすめ度の平均: 5.0
5 そのままな雰囲気がいい
5 1巻も素晴らしかったが
5 神作品ってレベルじゃない



「---わたしの家事は、”甘やかすための家事”」

こんなところで家事の神髄にでくわすとは思わなかった。

たしかに"家事"と一言で言っても、その家事を行う人の心持ちで、その家事は相手のためにやる家事か、体面的な面などから自分のためにやる家事か、というふうに2つに大別できる。 この発想はなかった。 この甘やかすための家事で、無意識下にしみこむ快楽が無自覚なまま人をだめにしていくというなんて恐ろしい娘。 是非自分を飼ってください!


それはさておき、前巻の「ある夏のお見合いと、あるいは空を泳ぐアネモイと。」 (一迅社文庫)の続きなんだけど、さすがに2年も前だし、1巻目が出たときはきれいに終わっていたのでもう終わりだと思い、置く場所もないことから残念ながらすでに売ってしまっている。 だから前巻は結構いい感じの物語だったという印象は残っているんだけど、細かいところまで覚えていない。

細かいところは覚えていないんだけど、この2巻を読んでまた1巻を読み返したくなるくらい、いい物語だった。

1巻では輪といちこの関係の変化が中心となった物語だったが、今回は輪とその姉妹との関係が中心となった物語で、オビにもある「アタシ、お兄ちゃんを卒業します」という物語。 卒業してどうなるかは読んでのお楽しみ。

そういうキャラクターの物語に、壮大な神々の世界の片鱗を感じさせる、神と神の物語が絡み、人と神の物語が一本にまとまるストリーティングはさすが朱門さんの真骨頂。

1巻ではそのままきれいに終わって、続きはなさそうな雰囲気だったのが、今回ではいろいろと伏線を残して、モロに続きますよという感じで終わっている。 朱門さんの今の仕事は知らないんだけど、これだけ明確に続きますよという終わり方をしているのなら、おそらく今度は2年も待たされずに続きが出てくるのではないかと期待できそう。

とりあえず1巻はまた探して手に入れよう。

2010年10月11日月曜日

10月11日買った本

テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX)
ヤマザキマリ
エンターブレイン
おすすめ度の平均: 4.5
5 変なマンガ
3 それほどかなぁ
5 全ての道は風呂につながっていた!
5 ぉおもしろい
5 身の回りにあふれたものが、新鮮に見える本


だいぶ迷ってたんだけど、試し読みを立ち読みしたら面白かったので買ってきた。

白井弓子初期短篇集 (IKKI COMIX rare)
白井 弓子
小学館
おすすめ度の平均: 5.0
5 まさに珠玉に短編集


なんか最近女性の描く人生もの的な物語がえらく身にしみる。歳かな…

眠れぬ夜の奇妙な話コミックス 百鬼夜行抄(19)
今 市子
朝日新聞出版
おすすめ度の平均: 5.0
5 読む読む
5 百鬼夜行抄 第19巻 メモ


妖怪ものとしてはガチ。 

PIECES〈1〉
PIECES〈1〉
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士郎 正宗
青心社
売り上げランキング: 6995
おすすめ度の平均: 3.0
3 ものたりず
5 とにかく士郎正宗の新刊が出ただけでもうれしい
4 今までの画集を持っていない人でも。
3 値段的には妥当かもしれないが..
1 解説がない


値段の割に薄いなぁと思いつつ、どんな内容なのかは知らないが士郎正宗なので、買い。 

キノの旅 14―the Beautiful World (電撃文庫 し 8-33)
時雨沢 恵一
アスキー・メディアワークス
売り上げランキング: 8
おすすめ度の平均: 4.5
4 十周年おめでとう
5 シニシズム的語り口
4 最近の「キノ」は風刺もの


地味に長いよね。激しく面白いわけではないんだけど、じんわり来る読後感がいい。

アクセル・ワールド 6 (電撃文庫 か 16-11)
川原 礫
アスキー・メディアワークス
売り上げランキング: 7
おすすめ度の平均: 5.0
5 良い引きでした
5 いいところで「続く」 あ”ーもう!
5 ネガ・ネビュラス解散の謎が明かされる
4 軍団再編篇スタート


ほうかご百物語 9 (電撃文庫 み 12-9)
峰守 ひろかず
アスキー・メディアワークス
売り上げランキング: 371
おすすめ度の平均: 4.5
4 秀作じゃないかと
5 完結!?


この2つは個人的定番化してしまった。 相当面白くなくなることでもなければ買い続けるな。

本を置く場所がない…

日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率

日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社プラスアルファ新書)
浅川 芳裕
講談社
売り上げランキング: 1398
おすすめ度の平均: 4.5
3 問題提起としてはおもしろいが
5 この本読んで知識をつけて、農林省に物を申せるようになろう。
5 衝撃的なタイトル
5 農水省よお前もか!
4 プロパガンダにはプロパガンダで対抗


日本の農業を語るなら、まず読んでおくべき本。

日本の食糧自給率が低いこと、小麦大豆をはじめとして、様々な食品が国産ではまかなえず、その大半が輸入されていることなどはよくマスコミなどでも喧伝されていることだが、その食糧自給率がいかにまやかしであるか、そして日本にはどのくらいの食料生産能力があるのかと言うことを、データを元に明快に解説している。

たとえばよくあるカロリーベースの食糧自給率というものがあるが、これは「(国産+輸出)/人口」の国産供給カロリーを「(国産+輸入-輸出)/人口」で算出される全供給カロリーで割ったものだが、2008年では、国産供給カロリーが1012キロカロリーで、全供給カロリーが2473キロカロリー、よって自給率は41%という計算になる。 しかしこの全供給カロリーは全部が摂取されているわけでは当然なく、2005年の厚生労働省の調査では供給カロリーが2573キロカロリー、摂取カロリーが1904キロカロリーとなる。その差の669キロカロリーはどこへ行ったのかというと、廃棄された分と言うことになる。 量にして日本の農産物輸入の5450万トン中1900万トンが廃棄されてる量になるそうだ。

要するに日本が贅沢になってコンビニやファーストフードで廃棄される食べ物が増えれば増えるほど、食糧自給率は下がっていく。 

逆に摂取カロリーで計算すれば、1904キロカロリー中、1012キロカロリーは国産でまかなえていることになり、食糧自給率は53%となる。 53%が多いか少ないかは別として、こちらの方が日本の実態をしめしていると思う。 

上記を一例として、他の国ではやっていない食糧自給率ベースで先進各国と比較した場合や、GDPベースでの比較、就労人口、生産額など様々なデータから日本の農業は世界と比較した場合どのようなポジションにいるのかというようなことをわかりやすく解説している。

またそういう農業行政に大きな力を持っている農林水産省が、農業の危機を喧伝することにより、いかに多くの天下り先の確保と、税金の無駄遣いをしているのかと言うことがよくわかる。  とりあえず小麦とバターの価格統制はすぐにでもやめさせる必要がある。 役所というのは本質的にそういうものなんだろうけど、自らの限界まで書類仕事、無駄な仕事をつくるものなんだなと言うのがよくわかる。

今の政権にはあまり期待できないけど、是非この不効率な農業行政を改める努力をしてほしいと強く思う。