三浦 しをん
新潮社
売り上げランキング: 115324
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おすすめ度の平均:
心中をテーマにした短編集悪くはないですが…
生と死の狭間を見つめる
三浦しをんは今年も快調!
1日800人。 これがなんの数字かというと、日本で自殺する人の数。
年間3万人、これだけの人が毎日自殺している中、この本を読むとこの多くの自殺者の中にはそれぞれの物語があり、自殺に到る原因があり、自殺を選ぶ意味があったのだろうと思うが、それでもその自殺しようという決意はもしかしたらわずかなことで変えることができたのではないだろうかという思いを抱いてしまう。
森の奥
そういう些細なきっかけで自殺しようという人を救えるのではないかという期待を抱いてしまう話。 それぞれの人はそれぞれの理由で必死だろうが、その理由もほかから見れば、自殺するほどのことではないというのは良くあるんだろうと思う。 そこで自分を客観視できるかどうかが運命の分かれ道でもあるんだろうな。
最後の部分で、彼の行方が分からないが故に物語の印象が深くなる。
遺言
「死んでおけばよかった」その言葉をキーワードに語られる昔語り。 老い先短い高齢の主人公の独り語りだが、そこに語られる「きみ」と呼ばれる伴侶との凄烈な思い出と、その結果としての今と、その中で思い続けた主人公の心情とがとてもしみじみ来る。 願わくば将来自分も伴侶を得てこのような思いを残したいと思う。
炎
10代の女の子は男とは全然違う世界を見てるんだなと言うことを二人の妹を見ていて思った。 自分と、自分の目に見える範囲しか見ていない。 だからこそそれだけ人との関係において濃密なんだろう。 あこがれていた人が自殺し、その原因を暴くが、さらに謎にとらわれていく。
星くずドライブ
幽霊になってしまった恋人が普通に主人公の身の回りにいる。 まさしく幽霊に取り憑かれたというような状況。 まさしく取り憑かれたような状態。 「永遠はあるよ」というのは某ゲームの台詞だが、その永遠のグロテスクさが際立つ。
幽霊ものが多かったりもするが、死というものを通して伝わる人の想いがしみじみ来る短編集。