2008年12月15日月曜日

家守綺譚

家守綺譚 (新潮文庫)
家守綺譚 (新潮文庫)
posted with amazlet at 08.12.15
梨木 香歩
新潮社
売り上げランキング: 22107
おすすめ度の平均: 4.5
5 心に染みる一冊
5 異界との接点
5 心に根付く
5 読み応えあり
5 日本むかし譚


いい話だったー、

それぞれが5ページから10ページほどのごく短い短編で、寝る前にちょっと開いて読むにはとても具合がよかった。 そんなわけで、小さい本なのに、ちびちび読んで読み終わるのに2週間くらいかかってしまった。 


物語的には100年くらい前の京都の山科疏水沿いの家にわけあってすむことになった、文筆業で食ってる青年の淡々とした日常風景の物語。 日常風景なんだけど、その日常が片足あっちの世界にはいりこんでて、サルスベリに懸想されたり、河童が庭の池にいたり、タヌキやかわうそに化かされたり、死んだ友人が普通に幽霊として戻ってきたりする日常だったりする。 


そういうあり得ないことが、ありえないはずなんだけど、普通にあって、そのありえないはずのことに巻き込まれながら、ちょっと気弱にときどきちょっと強気になってみたりしながら、その一風変わった日常を送っている。 その主人公の綿貫の異なる物にたいする淡々とした優しさ、異なる論理で生きる者たちをとまどいながらもそういうものと認めて受け入れる柔らかさがとてもいい味になっている。 


最後に綿貫征四郎の随筆「烏藪苺記(やぶからしのき)」があるが、この文章が明治大正時代に書かれていたような、とても風情のある文で古き良き日本語そのものだった。 こういう文章を自由に書けるようになりたいと思う。

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