2010年6月20日日曜日

宮司が語る京都の魅力

宮司が語る京都の魅力
中川 久公
PHP研究所
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面白い本なんだけど、タイトルに偽りありかなー

第一章「日本人の心」で日本人は昔からどのような姿勢で自然や神仏に接してきていたのかというような話で、京都とは全く関係ない部分。 でも後書きまで読むとどうやら著者が一番主張したかった部分がここに含まれているようで、そのためにタイトルと主張したい部分との乖離がおこり、なんかアンバランスなものを感じてしまう原因にもなっていると思う。

第二章の「年中行事」で、京都で行われている様々な年中行事と、京都の人たちがどのようにそれらの年中行事を行っているのかというような話がある。 第三章で「その他の祭り」として初宮詣や地鎮祭、上棟式などがあるが、これもまた京都独特というわけでなく、それほど関係ない。 第四章の「京都の名所 神社仏閣」京都の名所の神社仏閣などが7つほどあるが、京都の神社仏閣7つしか説明していないのは少なすぎるし、この章の半分が著者が宮司をやっている恵美須神社に関連する話、第五章で「雅楽」に関して書かれているが、これも京都の魅力という物とはほとんど関係がない。

ということで、京都の魅力といいながら、京都に関するような部分はかなり少ない。

とはいえご本人が昔はなにかと「なぜそうなのか」を聞きたがる「なぜなぜ坊や」だったと言われるだけあって、様々な神社や祭祀、風習の起源やいわれなどにはだいぶ造詣が深いようで、神社やお祭りの起源、また様々な風習の変遷などは細かく説明されていて興味深かった。

葵祭、祇園祭に関する部分で詳細に由来や変遷などどの解説がされていて、いろいろはじめて知ることがあったりして面白かった。 あと北野天満宮がもともと雷神をまつる場所であったという話とか。

神社の歴史などにも詳しいようだし、「宮司が語る京都の神社、祭りの起源」みたいなものの方が面白かったのではないかと思う。 もしくは第一章の「日本人の心」のようなこの著者が本当に言いたいことをに焦点を当てたような物か。 いずれにせよ、この本は方向性載ってない物を詰め込んだために焦点がぼやけてしまっているので残念。



P28、他方、日本の「宗教は、西洋の"religion"とは全く異なり、西洋の宗教観ではとうてい理解しにくい物です。我々の進行する神道や仏教も、我々の生活の中に根づいている習俗であり、我々の生活様式そのものが宗教観を具現化したものとなっています。つまり、我々の宗教は、生活における[習俗]そのものなのです。天上で天照大神をはじめとする天津国の神々が営まれること、たとえば、田を耕し、はたを織るというような営みをこの地上において再現すること、すなわち、労働することこそが喜びであり、尊いことでした。
我々の祖先は唯一絶対なる神を持たないのです。我々の神々には、失敗をする神もいれば、嫉妬をする神もいます。それらの神々は我々自身を映す鏡であり、決して絶対なる存在ではないのです。

P34、(ほかの動植物など)これら全ての生命体は、キリスト教圏では、万物の長として特別に選ばれた人間が神(God)から与えられた単なる食物と考えられていますが、我々の文化圏では、そのそれぞれに魂があり、その存在に意義があるとされています。その命に感謝し、ひとつも無駄にせず、有効に使うことが、原理原則なのです。

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